AIにより製品開発が一般に広まる中、差別化要因になるのはデザインです。「グッド」とはどのようなもので、私たちの制作にとってそれは何を意味するのでしょうか?
AI時代のグッドデザインとはを共有




イラスト: Jiyung Lee
2007年にiPhoneが登場して、モバイルファーストデザインの新時代を切り開いたように、AIは我々が知っていることをさらに強調しました。新しいテクノロジーの可能性を最大限に引き出すデザインパターンを見つけるには、十分な実験と時間が必要だということです。モバイルの黎明期には、多くの企業が導入を急ぐあまり、既存のデスクトップ体験をそのまま小さな画面に押し込んでいました。今日、私たちは同様の転換点に立っており、少し不器用ではありますが、可能性に満ちたシンプルなチャットボットやテンプレート化されたソリューションがすでに溢れています。モバイルと同様、豊富なインタラクション、直感的な操作、メディアに合わせた複数のパターンを用意し、この可能性を解き放てるか否かはデザイナーである私たち次第です。
シンプルなプロンプトからコード、デザイン、さらにはアプリケーション全体を生成するAIの能力により、チームはこれまで以上に迅速にコンセプトから作成までの作業を進められるようになり、プロセスに参加する人の数も増やせるようになります。今後、そのような製品を際立たせるため、デザインの重要性がさらに増すでしょう。しかし、AI時代のグッドデザインとは実際にどのようなものでしょうか? また、テクノロジーが急速に変化する中でチームをグッドデザインに導くにはどうすればよいでしょうか?
Figmaでは、AIがデザイナーに提供する機会を非常に大きなものと捉え、これらの課題に積極的に取り組んでいます。しかし、その可能性を完全に引き出すには、グッドデザインの要素を深く理解することが必要であるということに気づきました。最新のトレンドを追い求めたり、テクノロジーのために構築したりするのではなく、当社のものづくりに対する不変の原則、「共感、創造性、および実際のユーザーのニーズを解決すること」に基づいて仕事を進めていくことが大切なのかもしれません。
以下では、こういった疑問を当社デザイナーの視点から探り、AIが切り拓くデザインの未来に関する考えを共有します。アルゴリズム基盤の確立から新たな共創モデルの構想まで、デザインを自動化するだけでなく、向上するAI搭載製品を構築する方法や、進化の方向に関わらず、デザイナーの役割がこれまで以上に重要になると考える理由をともに探りましょう。

グッドデザインの基礎のコード化について

当社のデザインシステムを用いてUIの最初のドラフトを生成するAI機能の開発を始めた私たちは、AIにグッドデザインの原理を教える必要性に気づきました。「グッド」の定義を明確にすることもその一環です。他の多くのAI製品と同様、Make Designsは大規模言語モデル(LLM)をクリエイティブに活用してタスクを実行します。本質的にテキストベースであるLLMは、ライティングやコーディングのようなテキスト中心の作業には非常に有用ですが、UIデザインのような、目に楽しい作品を生成するにはさらなる飛躍が必要です。
私たちは、全方向的なデザインルールをそのまま引き継ぐことはできないと即座に気づきました。「グッド」が何を意味するかをページ数に限りのあるガイドラインで詳細に定義することは不可能なだけでなく、たとえそれができたとしても、トークンの制限により、膨大な量のルールのプロンプトをAIに供給することは技術的に不可能でした。いかなるUIにも大体当てはまる、簡潔で万能なガイドラインにグッドデザインの原則をまとめる必要があったのです。
この過程は、デザインを教えていた頃を思い出させてくれるものでした。デザインを教える場合、自分の直感的な理解を、他の人でも理解できる明確な原則に細分化することを余儀なくされます。ここで難しいのは、すべてのユースケースに確実に適用できるものでありながら、明確で、具体的かつ指導的なルールを見つけることです。これらの条件は互いに矛盾することが多いため、細分化するプロセスは非常に困難になります。「主要なアクションを画面下部に必ず配置する」や「常に8ピクセル単位で測定する」といった指示は、具体的かつ実用的でありながら、ほぼすべてのUIの作成で役立つため、バランスがとれています。当社はこういった最もレバレッジ効果の高い事実を重点的にAIに伝えることで、わずか数週間でFigma AIによるアウトプットの質を大幅に向上させることができました。
Webサイトやアプリの多様性は無限に思えるかもしれませんが、私たちが使用するソフトウェアのほとんどが、いくつかの基本的なレイアウトに集約できることがわかりました。このことで、デザイン業界では均質性に関する議論が巻き起こっていますが、こういった馴染みの深いパターンにより、テクノロジーの操作が簡単かつ快適になるという部分も大切です。無限の組み合わせではなく、基本的な構成のマスターからスタートすることで、Make Designsの機能を支える基盤を確立することができました。このアルゴリズムの基準が新たなクリエイティブの出発点となります。AIが生み出すアプローチは常に標準的かつ最もオーソドックスであるため、新しいアイデアを提案する役目はデザイナーが担います。結局のところ、過去に基づいて訓練されたAIが未来を創造することはできないのです。
デザインからコードまでの作業の連結について

AIツールにワークフローを支援してもらう中で、デザイナーとエンジニアの両者は、新しいパラダイムのニーズに応じて基本的なスキルセットを進化させていくでしょう。デザイナーは、AIツールの能力と限界に対する理解を深めるためにより多くの技術的な知識を習得し、エンジニアは、さらにユーザー中心のソリューションを作成するためにデザイン原則に対する理解を深めるかもしれません。最終的な成果物はそれほど変わらないように見えるかもしれませんが、そこに至るまでのプロセスはますます効率的で協力的になっていくでしょう。
これは、今日のデザインエンジニアの役割に似ています。多くの「デザインエンジニア」が「自分のアイデアをデザインしたい」、「UIを見やすくしたい」といった目標を掲げ、エンジニアとしてのキャリアをスタートさせています。時間をかけて新しいスキルを身につけ、別の分野に柔軟に適応した結果、今があります。今後は、AIを活用して簡単かつスムーズにビジョンを実現できるクリエイティブな人材として、多面的な「プロダクトビルダー」の原型に進化する人が増えるでしょう。専門分野の境界が曖昧になるとはいえ、専門的な役割やスキルを活用できる場は常にあるだろうと思います。デザイナーは引き続き優れたユーザーエクスペリエンスを作り続け、エンジニアは堅牢でスケーラブルなシステムの構築に専念するでしょう。AIがレイアウトの提案やコードスニペットの生成を支援することはあるかもしれませんが、最終的なクリエイティブの方向性と技術的な実装については、依然として人間の専門知識に頼ることになります。プロセスへのAIの統合が進むにつれ、デザインと開発の間のつながりがよりシームレスになることが期待できます。

プラグマティズムの力について

私にとって、AI時代のグッドデザインとは今日のテクノロジーを実用的かつ影響力の大きい方法で活用することです。現在のAIには、多くのことを簡単かつ確実に達成できる能力があり、検索がその良い例です。私たちは、ファイルを調べたり、チームにリンクを送ってもらったり、必要なコンポーネントやアセットを探したりと、適切な資料を見つけることに多くの時間を費やしていますが、AIを活用した検索機能を使えば、わかりやすい言葉で説明するだけで必要なものを即座に見つけることができます。また、ビジュアル検索ではさらに一歩進み、スクリーンショットをアップロードするだけで組織内の特定のデザインを見つけることができます。
AIを活用した検索機能を使用すると、これまで日の目を見なかった無数のデザインに新たな命を吹き込むこともできます。「デザインの墓場」に埋もれている無数の貴重な作品が発見されたり、見返されたりすることはまずありません。しかし、AIの力を借りれば、すべての作品を簡単に引き出すことができるようになり、インスピレーションの源として使ったり、創造性の解放に役立ったりします。過去の作品に簡単にアクセスして学ぶことで、デザイナーは検索に費やす時間を減らし、デザインの本質に集中し、より洗練され、情報に基づいたシームレスなエクスペリエンスを提供できるようになります。
ここで重要なのは、AIを既存のプロセスに慎重かつ段階的に統合すること。テクノロジーの準備が完了する前に「AIアシスタント」という全知全能の大げさな存在を追いかけるよりも、AIが今すぐ確実に提供できる、即戦力の価値に焦点を置く必要があります。AIを活用した検索やレイヤー名の自動変更などの機能は大したことがないように思えますが、毎日のワークフローに現実的で目に見えるメリットをもたらす能力があります。確実に機能するものから始め、イテレーションを通して迅速に学習させることで、時間と共に進化する能力に合わせてAIの役割を着実に拡大させることができます。この段階的なアプローチにより、より高度なAIアプリケーションへの道が開かれ、短期的な視点による過度な期待や失望のリスクを回避できます。
共創モデルに対する取り組みについて


これはChloe Scheffeがデザインを手がけ、Figmaが発行した印刷版およびオンラインの雑誌「The Prompt」から引用した記事です。
私のチームは何度も「共創」という考えに立ち返ります。私たちには、背景を無視して結果を返すサイロ化されたツールではなく、ニーズを賢く予測し、補完的に適応するAIが必要なのです。ここで覚えておきたいことがあります。AIは把握している日常業務の範囲でしか役に立ちません。現在はユーザーにさらなる背景を求めることで補っていますが、具体的な目標や確立されたデザインシステム、過去の作業、プロジェクトの背景を積極的に理解するAIが必要なのです。
このようなデザインであれば、単に役立つだけではありません。ツールによりクリエイティブなプロセスを自動化できるだけでなく、さらに強化する共創モデルを提供できるのです。たとえば、GitHubのCopilotが開発者を支援するように、AIもすべてをゼロから実現するのではなく、作業しながら改善できるようにするべきです。人の仕事を行うのではなく、人と協力して人のアイデアに息を吹き込む。ワークフローを深く理解し、サポートするAIと共にこのアプローチをとることで、私たちは単なるユーザーではなく、クリエイターとして活動できるようになるのです。
FigJamでのプランニングセッションを終えたところを想像してみましょう。FigJamではAIがボード全体にタグ付けされた会議メモ、優先事項、アクションアイテムを瞬時に把握し、「第3四半期のイニシアチブを視覚化するロードマップの作成」や「重要なポイントを要約したプレゼンテーションデッキのドラフト」をインテリジェントに提案できます。また、過去の作業をインデックス化することで、チームの実際のスタイルや手法、ビジュアル言語を成果物に組み込み、一般的なテンプレートをそのまま使うのではなく、チーム独特の作業方法を反映します。

雑誌「The Prompt」の全文については、オンライン雑誌またはFigma Storeで提供されている限定の印刷版をご覧ください。




