ピープルマネージャーの課題とチャンスを解説する3部構成の連載です。Shopify、Ironclad、Twitch、Uberのチームマネージャーからのヒントやコツをご紹介します。
デザインを活用した業務効率化を共有
Lennard Kok作の人物のイラスト。
私たちは文字どおり、かつてない時代を迎えています。ピープルマネージャーの方は特に痛感していることでしょう。企業のあり方が大きく変わる中、唯一変わらないのは変化が必要であるということです。ハイブリッドワークの微妙な部分に対応しながら、技術の進歩(と発散)の波に飲まれることなく、この激動の時代の中でチームのモチベーションを上げるのは、とても難しい仕事です。
しかし、見方を変えれば、基準となる「普通」がないということは、これからの仕事のやり方を一から自由に考え直すことができ、ピープルリーダーとしての仕事を自分なりに開始できるとも言えます。自分の時間をどう使うか悩んでいたり、仕事に価値や活力を吹き込んで業務の成果を上げるにはどうチームと関われば良いのか考えているのであれば、絶好の出発点と言えます。この連載では皆さんのヒントになるような実例を紹介します。自分のため、チームのため、そして仕事のために変化を受け入れ、これからの仕事のあり方を描くための指針となるはずです。このプロセスを再設計と呼びましょう。まず最初に、仕事を理想の形に変えるために、業務の徹底的な棚卸しをしましょう。
会議はすべて断ろう
一緒の時間が短いほどチームの連携が高まる理由。
2023年の初め、Shopifyは思い切った施策を打ち出しました。4人以上の定例会議をすべて禁止するというものです。一部の会議は例外的に復活させましたが、従業員ができるだけ自分の業務に集中できるようにするためです。
とても過激な策に見えますが、会議を全部中止するということには、他の人に邪魔されずに仕事に集中したいという基本的な欲求が大きな理由です。Shopifyはフルリモートで、効率よく協調して働くために、従業員は可能なときにはFigmaとFigJamの「常時オン」コラボレーションファイルに参加することが必要です。「多くのタイムゾーンにチームが分散しているので、会議開催は難しいのです。非同期でのコラボレーションが可能なツールへの投資が必要でした」とShopifyのシニアUXマネージャーのSebastian Speier氏は語ります。スケジュールを空けるためには、他の連絡手段が必要なのです。「文化の醸成」というと大げさに聞こえるかもしれませんが、仕事に集中できる時間、場所、リソースを保つことは言うまでもなく必要なことです。

プロジェクトの立案にFigJamを使うと、メンバーがリアルタイムに、積極的に参加できます。フィードバックやアイデアを非同期で残すこともできます
自分の時間の使い方はどうでしょうか。正直に考えてみてください。日々の時間をどう使っているか、上司やその上の上司の期待に沿っているでしょうか。マネージャーは制度改革や従業員の能力向上支援などの高レベルのタスクに集中していると、経営層は考えがちです。しかしマネージャーはもっと現実的な問題、たとえば会議の開催のやり方(あるいはその是非)や人材採用に取り組んでいることが多いのです。コラボレーションツールや可視化戦略を使って会議を効率化し、さらには会議をゼロにしてしまうことで時間を取り戻しましょう。業務を進めるためにいつも会議が必要なわけではありません。会議は、メンバー間のつながりを構築できるかが大事です。目に見える「成果」よりも仕事に対する態度や考え方を重視するようにしてください。
時間を(非同期で)有効に使う
フィードバックサイクルを見直そう
早い段階で頻繁に視覚化することで、チームの連携を保てるだけでなく、ステークホルダーから実情を把握していないフィードバックが遅れて(面倒な形で)届くのを避けることができます。
マネージャーとしては、ソリューションが全員歓迎もしくは全員反対の二者択一は避けたいものです。そうではなく、課題を全く違う視点で捉えるべきです。FigJamのスクリーンショットで作業のドラフトを共有して、フィードバックループを管理すれば、同僚やステークホルダーはプロセスを遅らせることなくアノテーションを残したり、付箋を貼ったり、絵文字で反応したりできます。一つひとつの些細なアイデアに反応を強制することもありません。

変化を受け入れましょう。固定的なプロセスは、チームメンバーが毎回プロセスを定義し直す必要がなく、重要な業務に集中するためには良い方法です。しかし、プロセスがうまく回っていないことを指摘できるようにすることも必要です。集合住宅の保守自動化を専門とするスタートアップ、Superでは、従業員は会社の業務を毎月振り返って効率化の提案をする機会を与えられています。この活動を通じて改善が進み、毎週の15分ミーティングでバグの報告用新システムや新機能をチームとしてテストできるようになりました。創業者のLindsay Liu氏はこう語っています。「経営層としてどうしたら改善できるかを社員に問いかけるのです。こうした振り返りから[社内の]最適化が進んでいます。誰もがアイデアを共有できるような環境が整いました」

業務ごとにフィードバックのルールを決めておくことも重要です。新しいプロジェクトを始めようとしてスタッフ全員にフィードバックを求めたとしましょう。「するとコメントが際限なく積み上がります」とFigmaの最高製品責任者の山下祐樹は言います。「さらにひどいと、(特に役員クラスが)文脈を無視してファイルに入ってきて、フィードバックを残し、去っていくことがあります。対応しないといけない新たなフィードバックが突然やってくるのです。そうなると大変です」
有意義なフィードバックを取得する方法
ドキュメントはもう要らない
手書きのスケッチや付箋、アナグラムなどを使ってオープンにアイデアを出し合うことで、メンバーはチームに目に見える形で貢献できるようになります
良質なコラボレーションとはどのようなものでしょうか。それは全員が1つの部屋に集まって壁を付箋で埋めつくすことではありません。コロナ禍によって、そうしたスタイルのコラボレーションが不必要で、実際には限界があることがわかりました。むしろ信頼すべき唯一の情報源となる1つのファイルでアイデアを交換して、それを進むべき方向の目印にしてアイデアを創出していくことが正しい方法です。自由にアイデアを生み出すために、古いツールを捨てるというような単純な話です。ShopifyのシニアUXマネージャーKatarina Batina氏は、文書の代わりにまず視覚化するプロセスは「(良い意味で)脳をリセットする」ようなものだと表現します。「会社として使い慣れているプロセスが、文書を開いて質問に無駄な回答を入れていくようなものであれば、創造性を失い、本当にユニークなアイデアは生まれないでしょう」とBatina氏は言います。「難しい問題を解くにあたって事前に『脳をリセット』していれば、新しい視点が生まれやすくなります。実際、創造的なソリューションが生まれることも多いです」
以前は会議室でやっていたことをもっと有機的にしたものです。このスペースは大きなアイデアをテーマに議論する場所です。ここではキャンバスが会議室に相当して、相互にフィードバックを出し合いながら、議論を深めていきます。複雑なものを視覚化し、理解しやすくします。このようなアプローチによって段階的にソリューションをつくりあげ、さらに大きなアイデアを生み出します。ShopifyのSpeier氏は言います。「Shopifyでは力強い前向きなビジョンを育てようとしています。20人が実際の会議室に集まるコラボレーションでは、全員が1つの文書で自分の考えを共有することは不可能です。言語の他にいろいろな表現でアイデアを交換できるツールの方が簡単です。誰もが参加しやすくなります」
実際の会議室に20人も集まるコラボレーションでは、全員が1つの文書で自分の考えを共有することは不可能です。言語の他にいろいろな表現でアイデアを交換できるツールの方が簡単です。誰もが参加しやすくなります。
オフの時間も大切に
「職務」の外でもメンバー同士がつながれば、チームの満足度と生産性が上がります
リモートワーク環境でいちばんつらいことは、孤独感でしょう。そこで、Shopifyではバーチャルな借り物競争をしたり、デジタルホワイトボード上でのイベントをしたりして、リモートで働くチームの一体感を作っています。Speier氏が認めるように、リモートワークは、多くのメンバーが望むような対面コミュニケーションの完全な代替にはなりません。大事なことは、個人的なつながりと物理的な安全のバランスを見つけることです。Batina氏は言います。「仕事に関する会話はとかく難しく考えがちです。コメントは厳しく、詳細でないといけません。その結果、カメラをオフにして一人きりで自分のスキルに疑問を持つようになり、自信を失いがちです」
仕事に関する会話はとかく難しく考えがちです。

ShopifyのSpeier氏のチームでは、毎週「クールダウン」の時間を設け、単純に楽しむための活動をします。
Speier氏はこのような感想を述べています。「人は意味のある形で同僚とつながりたいと感じています。チームとのコミュニケーションが仕事の改善に関するものだけだと、精神的にも肉体的にも負担になります」。全員が共通の理解で動いていれば、仕事だけに集中する時間を少なくできます。いずれにしても、課題の解決に使えるエネルギーは限られていて、最も成果を生み出せるのは、単なる共同作業者としての延長に仕事が存在するような関係、あるいは友人のような関係を築くことができたときなのです。
ShopifyのSpeier氏とBatina氏のチームではオフ時間の余裕を作ることで仕事を超えた関係が生まれ、仕事の困難をメンバー間で共有できます。Batina氏が好きだったIRLスタジオの評論家に似ているかもしれません。「[批評していた]部屋から出ると、1時間も批判していた相手に『いい靴だね』と声をかけるのです」



