DBS銀行とFigmaによる、金融DX
シンガポールを拠点とするグローバル銀行DBSは、56年の歴史を持ち、従業員数は36,000人、シニアリーダーの40%を女性が占めます。
DBSのグループデザインチームには、20カ国以上から135名のUXデザイナー、リサーチャー、UXエンジニア、コンテンツデザイナーが参加しています。
彼らの声を聞いてみましょう。
「私たちはあらゆるミッションに取り組むチームです。ミッションをやり抜き、長期的な目標にコミットし、顧客第一主義こそが真のビジネス価値という理念を掲げています」
この姿勢はDBSのストーリーを語る上で重要です。というのも、2009年当時は今と比べ良い状況ではなかったためです。 デザインチームが存在せず、UXの成熟という概念すらありませんでした。 事実、 DBSは「Damn Bloody Slow」(あまりに遅すぎる)の略だという社内ジョークがあったほどです。
では、何が変わったのでしょうか?
銀行などの規制業界におけるデザインの意味とは
UX成熟度の向上は、業種によってさまざまです。まずは、規制業界のデザインとはどのようなものかを理解することが重要です。
「素早く行動し破壊せよ」(ただし控えめに)
銀行業務は、常に利用可能な公共サービスのひとつと考えられています。そのため、DBSのアプリが停止した場合、政府からペナルティを受ける可能性があります。
食品配送のアプリがダウンした場合も問題ですが、金融サービスに比べればその影響は大きくありません。人々が自分のお金にアクセスできなくなることは、非常に大きな問題だからです。
これは、公共サービスの変更は時間がかかることも意味します。時には、デザイナーが作ってからリリースまでに1年かかることもあります。DBSがデューデリジェンスを実施する必要があるからだけでなく、商品によっては非常に複雑なものもあるからです。新人のデザイナーが完全に理解するのに3カ月以上かかる商品もあります。

セキュリティが鍵となる
新しいツールはすべて慎重に確認し、DBSのセキュアな環境にオンボードする必要があります。そうしなければ、DBSのスタッフはツールにまったくアクセスできないかもしれません。「ロックされたMac」に新しいフォントを追加するような一見簡単なことでも、難しいことがあります。
当初、デザインチームがMacの使用許可を得るのに苦労した理由の1つがセキュリティでした。
DBSでは、明確な監査証跡とバージョン管理も非常に重要です。本番アプリの小さな変更も、それを開始し、承認した担当者を追跡できる必要があります。
WindowsユーザーとMacユーザーをブラウザーでひとつに
2022年、DBSは5年連続で「世界最高の銀行」に選ばれました。この変革の大部分を占めているのが、ユーザー視点のデザインです。
Leo Lin氏(上級副社長、DBSのデジタルチャネルデザイン戦略兼デザイン基準担当)は2015年にDBSに入社しました。新しく結成されたDBSのUXデザインチームに採用された数少ないデザイナーの一人として、すべてを見てきました。
「デザインを使って商品開発の考え方を変える方法を知りたかったのです。機能を優先するのではなく、ユーザーを第一に考える方向に。それまでは分断された環境で仕事をしていたので、私たちは団結する必要がありました」
Figmaを採用する前、DBSは複数のツールを使用していました。大きな課題のひとつに、デザイン業務ではMacが、その他の業務ではWindowsが使用されていることでした。
そのため、Mac中心のツールでは限界がありました。Leo氏は、パワーポイントなどのファイルを常にメールで送り、フィードバックを待って、それから変更を加える必要があったとコメントしています。つまり、問題はコラボレーションができないことでした。
「途切れ途切れの携帯回線で通訳を介してコミュニケーションを取るようなもので、誤解が多くありました」と彼は言います。
例えば3年前、DBSはシンガポール、台湾、インドネシアの顧客向けに新しいネイティブモバイルサービスを開始しました。まだFigmaを導入していなかったため、チームはデザインを画像としてエクスポートし、複数のチームからフィードバックを集める必要がありました。そして、ビジネスの関係者は、当時使用されていたデザインツールにアクセスできなかったため、フィードバックは膨大な種類のフォーマットで返ってきました。
「Eメール、パワーポイント、Teamsのメッセージ、WhatsAppまでありました。見落としたり、誤解が生じたりしても不思議ではありません。そして、何かが承認されたときは、Jiraに添付できるように、デリバリーチームが再び画像としてエクスポートする必要がありました。結局、デザイン関連のバグを修正するために大量のバックログを抱えることになりました。修正されたものと、そうでないものがあったからです」とLeo氏。
対照的に、Figmaはブラウザーベースです。「単純な機能のように聞こえますが、ブラウザーでの作業は画期的でした。MacとWindowsのユーザーが一緒に、しかも同時に、ストレスなく作業できたからです」
さらに、Figmaのエンタープライズプランは、金融部門で非常に重要なセキュリティに対応しているので、DBSにとっては安心です。「Figmaエンタープライズは、組織全体で異なるレベルのアクセスが可能で、追跡可能なログとシングルサインオン(SSO)によって、デザインを保護できます」とLeo氏は語ります。
UX成熟度を高めるツールとプロセス
ガバナンス、フレームワーク、UX成熟度といったものは、主にパワーポイントでしか論じられない実生活とはほとんど関係ない概念のように思えるかもしれません。これまではそのような考えが主流でしたが、適切に実行すれば、組織の変化を促す強力なツールとなります。

アイデアから始める
新しいツールが必要な理由は組織によって異なります。効率性の向上を目的にする場合もあれば、アイデア優先にすべき場合もあります。
DBSの場合、そのアイデアの効果は数字では表せないものでした。
「どんなお金にも何らかの意味がありますが、お金そのものを欲しがっている人はいません。私たちはお金が与えてくれるものを求めています。つまり、お金とは本当はお金のことではないと認めているのです。私たちは商品に感情を注入することで、商品を取引の対象からから魅惑的なものへと昇華させています。その結果は、お客様との感情的な結びつきです」とLeo氏は言います。
ツールやプロセスは、目的を達成するための手段にすぎません。アイデアについて言えば、「仕事のやり方が非効率的だ」という話から、「この大きなアイデアを実現しよう。こんな方法ならもっと早く実現できるはず」のように会話が膨らみます。
そして分断を解消する
コラボレーションと共創。新しい考え方ではありませんが、効果を期待できます。FigJamのようなツールを使えば、ビジネスステークホルダーとブレインストーミングを行い、共同で創造できます。
「デザイナーだけでなく、全員が商品のオーナーシップを握っています」Leo氏は説明します。
コラボレーションは、四半期に一度のワークショップで行われるような低頻度であってはなりません。日常の一部であるべきなのです。だからこそ、Figmaのようなツールが非常に重要です。Macもデザインスキルも必要ありません。誰でもデザインファイルを開いて、リアルタイムで共同作業ができます。
新しいツールをプロセスに組み込む
毎日使っている、技術、ビジネス、デザイン、デリバリーのプロセスに新しいツールを組み込むことは、全員が会議で同意して議事録に残す、で終わりではありません。次のような多くの作業が必要になります。
- デリバリーチームは、ユーザーストーリーの書式を更新してFigmaのリンクを含めるようになりましたか?それとも、まだ画像を添付し、それに対してテストしていますか?
- ビジネスステークホルダーは、Eメールで送ったFigmaのリンクを開いてコメント機能を使っていますか?それとも、画像をエクスポートしてパワーポイントを送り返すよう依頼してきますか?
- 開発者は、エッジケースやインタラクションの動作に関する議論にコメント機能を使っていますか?それとも、そうした機能を使ってくれないせいで、あなたの仕事が増えていませんか?

コントロールを(一部)放棄する
最後に、しかしおそらく最も重要なことは、コントロールを放棄することです。あるツールやプロセスが本当に組織に受け入れられたとき、人々はあなたが予想していなかった方法で使い始めるでしょう。例えば、DBSのいくつかの商品チームは、デザインチームとより実践的なコラボレーションを行うために、Figmaの編集ライセンスを購入しました。
運用全般に目を配るべきですが、ツールやプロセスに使用方法の制約を作ってはいけません。必要な使い方ができなければ、人々は代わりに新しいツールを使い始めるからです。
DBSデザインチームの次なる目標
- このケーススタディの執筆時点で、DBSは2つの国にまたがるXXLリデザインプロジェクトにFigmaを使用しています。このプロジェクトでは、25人以上のデザイナーが、12の開発チーム、ほぼすべてのDBS商品チームと共同作業を行っています。難しい取り組みですが、今のところ順調です。
DBSが教える、大規模プロジェクトでFigmaを使用するコツ
- バージョン管理は重要です。DBSには作業進行中のファイルがあり、承認されると引き継ぎ用のフォルダに移動されます。ユーザーストーリーに添付できるのは、引き継ぎリンクのみです。
- すべてを標準化します。ファイルの命名規則、ファイル構造、変更を示すメモのフォーマット。小規模のチームではさほど重要ではありませんが、大きなチームでは違います。小さな矛盾の積み重ねが、雪だるま式に影響を及ぼすことがあります。
- 目的別にSlack/Teamsチャンネルを作成し、そこでのコミュニケーションを徹底します。例えば、同じデモのフィードバックが5つのSlackチャットで議論されていれば、誰もすべてを確認して最終決定を下そうとは誰も思わないでしょう。
- デザインプロデューサーがいるなら、花やケーキ、子犬をたくさん送ってあげましょう。彼らなしでは私たちの業務は成り立たないのですから。
The Total Economic Impact of Figma (Figmaによる総経済効果)
Forrester社発行の本レポートは、ワークフローの効率化やデザインスタックの統合、優れた製品の開発におけるFigma活用事例を紹介しています。
Figmaを活用してデザインを拡張させる
優れたデザインは、製品やブランドを差別化するために欠かせません。しかし、優れたものは一人では作れません。Figmaは、製品チーム全体で迅速、包括的にデザインするためのワークフローを実現します。
Figmaを活用したデザイン拡張について、お問い合わせください。
Figmaの主な特長:
- アイデア出しから制作、デザイン構築まで、デザインプロセスのすべてのステップをワンストップに集約可能
- デザインワークフローを加速させる、全社共有のデザインシステム
- 製品チームのプロセスにおける多様性を促進する、ウェブベースでアクセシビリティとユーザビリティの高い製品群